「FAXで注文を受けて、手入力でシステムに打ち込む」——BtoB取引の現場では、こうしたアナログな受注業務がまだ多く残っています。手入力には時間がかかるだけでなく、転記ミスのリスクも伴います。BtoB ECサイトを構築すれば、取引先がオンラインで発注でき、受注・在庫・請求の情報が自動連携します。人手による転記がなくなり、受注ミスも減ります。NOTDESIGNSCHOOL(デザインスクール事業)では、COO就任時の売上360万円からデジタル化と仕組みづくりを徹底し、売上を15倍以上に成長させました。BtoB ECサイトのようなデジタル基盤の整備が、事業成長の土台になる好例です。本記事では、中小企業がBtoB ECサイトを構築する際のプラットフォーム選定から、導入・活用までの手順を解説します。
BtoB ECサイトとBtoC ECサイトの違い
BtoB ECサイトは、企業間取引をオンライン化する仕組みです。BtoC(消費者向け)のECサイトとは、いくつかの重要な違いがあります。まず「価格体系」。BtoBでは取引先ごとに単価が異なる掛け率取引が一般的です。同じ商品でも、A社には定価の70%、B社には定価の80%で販売するケースがあります。BtoB ECサイトでは、ログインした取引先ごとに表示価格を自動で切り替える機能が必要になります。次に「決済方法」。BtoCではクレジットカード決済が主流ですが、BtoBでは月末締め・翌月払いなどの掛け売り(与信取引)が基本です。請求書払いに対応したBtoB ECサイトでないと、既存の取引先は使ってくれません。さらに「承認フロー」。BtoBでは発注に上長の承認が必要なケースがあり、「担当者が発注→上長が承認→注文確定」という承認ワークフロー機能が求められます。加えて「発注単位」。BtoBではケース単位やロット単位での発注が一般的で、最小発注数量の設定も必要です。このように、BtoB ECサイトにはBtoB特有の商習慣に対応した機能が必要です。BtoCのECプラットフォームをそのまま流用すると、運用で無理が出ます。
BtoB ECサイトで解決できる3つの課題
BtoB ECサイトの導入で解決できる課題は大きく3つあります。1つ目は「受注業務の工数削減」。電話・FAX・メールで受けた注文を手入力する作業がなくなります。kotukotuが支援したあるサービス業の企業では、受発注業務のデジタル化によって月40時間の工数削減を実現しました。受注1件あたりの処理時間が15分から3分に短縮されたケースもあります。2つ目は「受注ミスの削減」。手入力がなくなるため、商品番号の読み間違いや数量の打ち間違いがゼロになります。FAXの文字が読みにくくて確認の電話をかける、という手間もなくなります。3つ目は「営業時間外の受注」。取引先は24時間いつでも発注でき、営業担当者が不在でも注文が入ります。「営業時間内に電話をかけないと注文できない」という制約がなくなることで、取引先にとっても利便性が向上します。とくにFAXや電話での受注に依存している企業ほど、BtoB ECサイトの導入効果は大きいです。導入前に現状の受注1件あたりの処理時間とミス率を計測しておくと、導入後の効果を数字で証明しやすくなります。
プラットフォーム選定のポイント
BtoB ECサイトのプラットフォームは、大きく3タイプに分けられます。1つ目は「BtoB EC専用プラットフォーム」。Bカート、楽楽B2B、アラジンECなどが該当し、BtoB特有の機能(掛け率管理・承認フロー・取引先別カタログ・最小発注数量設定)が最初から備わっています。月額3〜10万円程度から利用でき、開発不要でスピーディに立ち上げられます。2つ目は「汎用ECプラットフォームのBtoB拡張」。Shopify PlusやEC-CUBEにBtoB向けプラグインを追加して使うタイプです。BtoCとBtoBを1つのプラットフォームで運営したい場合に向いています。ただし、プラグインの品質や対応範囲にばらつきがあるため、事前の検証が必要です。3つ目は「フルスクラッチ・セミスクラッチ開発」。自社の業務に完全に合わせた仕組みを構築する方法です。費用は数百万〜数千万円と高くなりますが、複雑な商習慣がある業種では選択肢になります。中小企業がまず始めるなら、初期費用を抑えられるBtoB EC専用プラットフォームからスタートするのが現実的な方法です。
構築に必要な機能要件の整理
BtoB ECサイトを構築する前に、自社に必要な機能要件を整理します。必須機能としては、(1)取引先ごとの価格設定(掛け率管理)、(2)掛け売り対応(請求書払い・月末締め翌月払い)、(3)最小発注数量・ロット単位の設定、(4)発注履歴からのリピート注文(前回と同じ内容で再発注できる機能)、(5)CSV一括発注機能(大量の品目を一度に発注する取引先向け)。あると便利な機能としては、(6)在庫数のリアルタイム表示、(7)出荷状況の追跡(取引先が自分で配送状況を確認できる)、(8)基幹システムとのAPI連携、(9)取引先別のカタログ表示制御(取引関係のない商品を非表示にする)。すべてを最初から実装しようとすると費用も期間も膨らみます。まずは必須機能だけで稼働させ、運用しながら追加していくのが中小企業に合ったアプローチです。機能要件の優先順位は、主要取引先5〜10社へのヒアリング結果をもとに決めると、使われるBtoB ECサイトになります。
導入から稼働までの5ステップ
BtoB ECサイトの導入は5つのステップで進めます。ステップ1は「現状の受注フロー分析」。現在の受注方法(FAX・電話・メール)ごとの件数・工数・ミス率を数字で把握します。このBefore数値が効果測定の基準になります。ステップ2は「プラットフォーム選定・契約」。前述のポイントをもとに2〜3社を比較検討し、デモやトライアルを経て決定します。ステップ3は「商品マスター・取引先マスターの整備」。商品情報(品番・品名・画像・価格・JANコード)と取引先情報(掛け率・与信枠・配送先・決済条件)を整理し、システムに登録します。ここが最も時間がかかる工程で、1〜2ヶ月を見込みます。商品画像の撮影や説明文の作成も並行して進めます。ステップ4は「取引先への案内・トレーニング」。操作マニュアルを用意し、主要取引先10社程度から順にオンラインでの発注に切り替えてもらいます。取引先向けに操作説明会を開くと、導入がスムーズに進みます。ステップ5は「運用開始・効果測定」。稼働後1ヶ月で受注件数・処理工数・ミス率のBefore→Afterを測定し、改善点を洗い出します。
BtoB ECサイトを起点にした業務デジタル化
BtoB ECサイトの導入は、受注業務のデジタル化にとどまりません。受注データがデジタルで入ってくるようになると、在庫管理・出荷管理・請求管理との連携が容易になり、バックオフィス業務全体の効率化につながります。さらに、受注データを分析すれば、取引先ごとの購買傾向や季節変動が見え、営業戦略にも活かせます。「A社は毎月第1週に大量発注する」「B社はこの商品カテゴリの注文が減少傾向」といった情報が自動で見える化されます。DX推進の全体像はDX推進の始め方で、業務効率化ツールの選び方は業務効率化ツールの選び方で解説しています。また、コスト構造の見直しにはコスト構造改革の進め方もあわせてご覧ください。BtoB ECサイトを起点に、受注から出荷、請求までの一連のプロセスをデジタル化していくことで、事業全体の効率と競争力が向上します。
まとめ:BtoB ECサイトで受注業務を変える
- BtoB ECサイトはBtoC ECとは異なり、掛け率管理・掛け売り・承認フローなどBtoB特有の機能が必要
- 受注工数の削減・受注ミスの削減・営業時間外受注の3つが主なメリット
- 中小企業はBtoB EC専用プラットフォームからスモールスタートするのが現実的
- 機能要件は取引先ヒアリングをもとに優先順位をつけ、段階的に実装する
- 商品マスター・取引先マスターの整備が導入成功の鍵
- BtoB ECサイトを起点に、バックオフィス全体のデジタル化へつなげる
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この記事を書いた人 — kotukotu編集部 kotukotuは「戦略と実行をつなぐ右腕型パートナー」として、中小企業の売上改善・コスト構造改革・DX推進を伴走支援しています。 kotukotuの伴走支援について詳しく見る
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