顧客分析の始め方がわからず、データを活用できていない企業は少なくありません。この記事では、Excelでもできる顧客分析の始め方を解説します。正しい始め方を押さえて、売上向上のヒントを見つけましょう。
「顧客のことは分かっているつもりだった」――多くの中小企業経営者がデータを見て最初に口にする言葉です。感覚で把握している顧客像と、データが示す実態にはズレがあります。そのズレに気づくことが、顧客分析の第一歩です。
本記事では、特別なツールがなくてもExcelで始められる顧客分析の実践手法を解説します。高度な統計知識は不要です。基本的な集計とソートができれば、今日から取り組めます。
なぜ顧客分析が必要なのか
「全員に同じ対応をする」のは公平に見えて、実は非効率です。売上の大部分を占めるのは全顧客の20〜30%であることが多く、全員に均等にリソースを割くと、本来注力するべき顧客への対応が薄くなります。
顧客分析を行うことで、次のことが見えてきます。
- 誰が利益を生んでいるのか: 売上だけでなく利益ベースで優良顧客を特定する
- 誰が離脱しそうなのか: 購買頻度が落ちている顧客を早期に発見する
- どこに伸びしろがあるのか: アップセル・クロスセルの余地がある顧客を見つける
顧客分析は「データ分析」というと難しく聞こえますが、要は「顧客を正しく理解するための整理」です。売上改善の5つのアプローチでも述べた通り、数字を正しく見ることが改善の出発点です。
Excelでできる顧客分析3つの手法
RFM分析
顧客を3つの軸で評価する手法です。R(Recency:最終購入日からの経過日数)、F(Frequency:購入頻度)、M(Monetary:累計購入金額)。各軸を3〜5段階でスコアリングし、顧客をグループ分けします。
Excelでの実践手順は以下のとおりです。
- 顧客ごとに「最終購入日」「購入回数」「累計金額」を集計する
- 各項目で全顧客を並べ替え、上位20%・中位60%・下位20%に分ける
- 各項目にスコア(3・2・1)を付ける
- 合計スコアでグループを作る(9点:最優良、6-8点:優良、3-5点:要注意)
RFMスコアが高い顧客には手厚いフォローを、低い顧客には再活性化のアプローチを、という施策の優先順位が見えてきます。
ABC分析
売上金額で顧客をA・B・Cの3ランクに分ける、最もシンプルな顧客分析です。
- A顧客:売上上位20%(全体売上の70-80%を占める)
- B顧客:中位30%(全体売上の15-20%)
- C顧客:下位50%(全体売上の5-10%)
Excelで売上順にソートし、累計構成比を計算するだけで実行できます。A顧客の離脱防止を最優先にし、B顧客のA顧客化を狙う、というのが基本戦略です。
コホート分析
「いつ初回購入した顧客か」でグループを分け、その後のリピート状況を追跡する手法です。「1月に初回購入した顧客のうち、3ヶ月後もリピートしているのは何%か」を時系列で見ます。
リピート率が急落するタイミングが見えれば、そこに手を打てます。例えば「初回購入から2ヶ月目に離脱が多い」と分かれば、1ヶ月半後にフォローメールを送る施策が有効です。リピート率改善の施策を打つ前に、まずこの分析で現状を把握しましょう。
顧客分析の進め方:4ステップ
ステップ1:データを集める
まず必要なのは、顧客ごとの購入データです。最低限「顧客名」「購入日」「購入金額」の3項目があれば分析を始められます。POSシステム、会計ソフト、受注管理表など、既存のデータソースから抽出しましょう。
ステップ2:データを整形する
Excelに取り込んだら、表記ゆれ(株式会社とカ)、重複、欠損値を修正します。地味な作業ですが、ここを怠ると分析結果が狂います。顧客名の名寄せは特に重要です。
ステップ3:分析を実行する
前述のRFM分析、ABC分析、コホート分析のうち、自社の課題に合ったものから着手します。最初はABC分析が最もシンプルでおすすめです。
ステップ4:施策に落とす
分析結果を眺めて終わりにしない。「A顧客上位10社に来月中に訪問する」「3ヶ月以上購入のない顧客にDMを送る」のように、具体的なアクションに落とし込みます。分析の価値は施策に落ちた瞬間に生まれます。
顧客分析の結果を施策に活かす方法
顧客分析で見えたグループごとに、異なるアプローチを設計します。
最優良顧客(A×高RFM): 定期的な訪問やフォローで関係を強化。値上げ交渉もこの層なら受け入れられる可能性が高いです。担当者との信頼関係が途切れないよう、引き継ぎルールも整備しましょう。
成長余地のある顧客(B×中RFM): アップセルやクロスセルの余地がある層です。購入履歴を見て「この商品を買っている顧客は、あの商品も必要としている可能性が高い」といった仮説を立て、提案につなげます。
離脱予備軍(購入頻度低下中): RFM分析のR値が急速に下がっている顧客は要注意です。離脱する前にフォローの手を打ちます。アンケートやヒアリングで不満の原因を探り、対処しましょう。
休眠顧客(長期未購入): すべてを追いかける必要はありません。過去のA顧客だった休眠顧客だけに絞って再アプローチすると効率的です。
顧客分析の成功事例
kotukotuが伴走したBtoB企業では、月間リード数30件の段階から顧客分析に着手しました。既存顧客のABC分析を行い、A顧客の共通特性(業種・規模・初回商談からの流入経路)を洗い出しました。
その特性に基づいてターゲティングを見直し、マーケティング施策を最適化した結果、月間リード数は30件から90件に増加。しかも、A顧客の特性に合致するリードの割合が増えたことで、商談化率も改善しました。
ポイントは「闇雲にリードを増やす」のではなく「質の高いリードを効率的に獲得する」という発想への転換です。顧客分析なしにこの判断はできませんでした。分析結果をKPIダッシュボードに組み込み、毎週の営業会議で確認する運用を定着させたことも、継続的な成果につながっています。
顧客分析を定着させる運用のコツ
顧客分析は一度やって「わかった気になる」のが最大の落とし穴です。定着させるためのコツを紹介します。
月次で分析データを更新する。 顧客の状態は常に変化しています。少なくとも月次で購入データを更新し、RFMスコアやABCランクの変動をチェックしましょう。A顧客がB顧客に落ちていたら、すぐにフォローが必要です。
営業会議で分析結果を共有する。 分析担当者だけが結果を握っていても意味がありません。週次や月次の営業会議で「今月A顧客から離脱予備軍に移行した企業」「新たにA顧客に昇格した企業」を共有し、チーム全体でアクションを決めましょう。
小さく始めて精度を上げる。 最初から完璧なデータや精緻な分析を目指すと、準備段階で止まってしまいます。まずは手元にあるデータでABC分析だけ実行し、その結果で1つだけアクションを起こす。この小さなサイクルを回すことで、「分析→施策→成果」のつながりを実感でき、継続するモチベーションが生まれます。
分析に必要なツールは無料で揃う。 Excelの基本機能(ソート、ピボットテーブル、COUNTIFS関数など)があれば、中小企業の顧客分析には十分です。Googleスプレッドシートでも同じことができます。将来的にデータ量が増えたら、CRMツールの導入を検討しましょう。CRMに蓄積されたデータをもとに顧客分析を行えば、より精度の高い施策設計が可能になります。
顧客分析の実践チェックリスト
顧客分析に着手する前に、以下の項目を確認しておくとスムーズに進められます。
- 顧客ごとの購入データ(顧客名・購入日・購入金額)が揃っているか
- データの表記ゆれや重複を整理したか(名寄せ済みか)
- まず取り組む分析手法を1つ決めたか(迷ったらABC分析から)
- 分析結果を共有する場(営業会議など)が決まっているか
- 分析結果から「来週やること」を1つ決められる状態か
- データを月次で更新する担当者と手順が決まっているか
完璧にデータが揃うのを待っていると、いつまでも分析に着手できません。手元にある不完全なデータでも、まずABC分析を1回やってみることが最も大事な一歩です。
まとめ:顧客分析は「データで顧客を理解する」第一歩
- 顧客分析は特別なツール不要、Excelで始められる
- まずはABC分析から。売上上位20%の顧客を特定する
- RFM分析で顧客の状態(優良・成長・離脱予備軍・休眠)を把握する
- 分析結果は必ず具体的な施策に落とし込む
- 「全員に同じ対応」から「顧客ごとに最適な対応」への転換が鍵
顧客分析は一度やって終わりではありません。四半期ごとに更新し、顧客の変化を追い続けることで、打ち手の精度が上がっていきます。
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この記事を書いた人 — kotukotu編集部 kotukotuは「戦略と実行をつなぐ右腕型パートナー」として、中小企業の売上改善・コスト構造改革・DX推進を伴走支援しています。 kotukotuの伴走支援について詳しく見る
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