毎月の請求書発行に何時間かけていますか。Excelで請求書を作成し、印刷して封入して郵送する——この一連の作業をデジタル化するだけで、経理業務の工数は大幅に減ります。さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応を考えると、請求書電子化は「いつかやる」ではなく「今すぐ着手する」テーマです。kotukotuが支援したあるサービス業の企業では、請求書を含む受発注業務をデジタル化した結果、月40時間の工数削減を達成しました。本記事では、中小企業が請求書電子化を進めるための手順と、制度対応のポイントを具体的に解説します。
請求書電子化が中小企業に必要な3つの理由
請求書電子化のメリットは大きく3つあります。1つ目は「工数削減」。紙の請求書は、作成・印刷・封入・郵送・控えのファイリングと、1通あたり15〜30分かかることもあります。月に50通発行している企業なら、請求書関連だけで月12〜25時間を使っている計算です。電子化すれば、作成からメール送信まで数分で完了し、控えも自動保存されます。2つ目は「コスト削減」。用紙代・印刷代・封筒代・切手代が不要になります。切手代だけでも1通84〜94円。月に100通の請求書を発行している企業なら、切手代だけで年間10万円以上、用紙・封筒・印刷代を合わせると年間で15〜25万円の削減効果があります。3つ目は「法制度への対応」。電子帳簿保存法により、電子データで受け取った請求書は電子データのまま保存することが義務化されています。紙に印刷して保管する方法は認められなくなっているため、請求書電子化は法令遵守の観点からも避けられません。
インボイス制度と電子帳簿保存法のポイント
請求書電子化を進めるうえで押さえておきたいのが、インボイス制度(適格請求書等保存方式)と電子帳簿保存法の2つの制度です。インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために「適格請求書」の保存が必要です。適格請求書には、登録番号・税率ごとの消費税額・適用税率・取引年月日・取引内容などの記載が求められます。手書きやExcelで作成している場合、記載漏れのリスクが高くなります。電子帳簿保存法では、電子取引データの保存にあたって「検索機能の確保」(日付・金額・取引先で検索できること)と「改ざん防止措置」(タイムスタンプの付与や訂正削除の履歴が残るシステムの利用)などの要件を満たす必要があります。難しく聞こえますが、対応した請求書電子化ツールを使えば、これらの要件は自動的にクリアできます。自力で要件を満たそうとするより、ツールに任せるのが現実的な方法です。
請求書電子化ツールの選び方
請求書電子化ツールは数多くありますが、中小企業が選定する際のチェックポイントは5つあります。(1)インボイス制度・電子帳簿保存法に対応しているか。これは大前提です。(2)既存の会計ソフトやクラウド会計と連携できるか。請求データが会計ソフトに自動反映されれば、仕訳入力の手間がなくなります。(3)操作がシンプルで、経理担当者がすぐに使えるか。複雑なツールは現場に定着しません。(4)取引先への送付方法が柔軟か(メール・PDF・郵送代行など)。取引先すべてが電子請求書を受け入れるとは限らないため、郵送代行機能があると移行期に便利です。(5)月額費用が自社の請求書発行件数に見合っているか。月10通以下なら無料プランで十分なツールもあります。代表的なツールとしては、freee請求書・マネーフォワードクラウド請求書・Bill One・MakeLeapsなどがあります。まずは無料トライアルで実際の業務に合うか試してから導入を決めると失敗が少ないです。クラウド会計との連携についてはクラウド会計導入ガイドも参考になります。
請求書電子化の進め方4ステップ
請求書電子化は段階的に進めるのがポイントです。ステップ1は「現状の棚卸し」。現在の請求書発行フローを書き出し、どこに時間がかかっているかを把握します。月の発行件数・郵送にかかるコスト・ミスの頻度・請求書に関する問い合わせの件数も数字で記録します。Before数値を正確に把握しておくことで、電子化後の効果測定ができます。ステップ2は「ツール選定・テスト導入」。2〜3社のツールをトライアルし、操作感と会計ソフトとの連携を確認します。経理担当者だけでなく、営業担当者や取引先の立場からも使いやすいかを確認するのが大切です。ステップ3は「取引先への案内」。電子請求書への切り替えを取引先に通知します。メールやFAXで案内状を送り、切り替え時期と受け取り方法を説明します。一部の取引先が紙を希望する場合は、ツールの郵送代行機能を使えば対応できます。ステップ4は「運用開始と振り返り」。運用を開始し、1ヶ月後に工数やコストのBefore→Afterを比較します。「請求書発行にかかる時間が月15時間→3時間に減った」「郵送コストが月2万円→ゼロになった」といった具体的な数字で効果を確認します。
よくあるつまずきポイントと解決策
請求書電子化で中小企業がつまずきやすいポイントを3つ紹介します。1つ目は「取引先が紙を希望する」。これは全取引先を一斉に切り替えようとするから起きる問題です。まず電子請求書を受け入れてくれる取引先から切り替え、紙を希望する取引先には郵送代行を使います。段階的に切り替え比率を上げていけば、無理なく移行できます。実際に電子化を始めてみると、紙を希望していた取引先も「うちも電子で構いませんよ」と変わっていくケースが多いです。2つ目は「社内の経理担当者が操作に慣れない」。対策は、ツール提供元の導入サポートやオンライン研修を活用することです。最初の1ヶ月は旧フローと並行運用し、徐々に電子のみに切り替えると安心です。経理担当者向けの操作マニュアルも用意しましょう。3つ目は「過去の請求書データの移行」。すべてを移行する必要はありません。法的に保存義務がある期間分だけPDF化しておけば十分です。完璧を目指して手が止まるより、まず新しい請求書から電子化を始める方が効果的です。
4つ目は「社内の承認フローが曖昧になる」。紙の請求書では、ハンコを押す順序で承認フローが成り立っていた企業も多いです。電子化すると「誰がいつ確認したのか」が分かりにくくなるため、ツール上で承認ステップを設定し、発行前に上長が確認する仕組みを組み込んでおきましょう。承認フローをデジタルで可視化することで、むしろ紙の時代よりも透明性が高まります。
請求書電子化から始める経理DX
請求書電子化は、経理業務のデジタル化の入り口にすぎません。請求書を電子化したら、次は経費精算のデジタル化、勤怠管理のクラウド化、給与計算の自動化と、順番にデジタル化の範囲を広げていけます。一つひとつの業務が電子化されると、データが連携し、転記ミスや二重入力がなくなります。たとえば、請求書データが会計ソフトに自動連携されれば、仕訳入力が不要になります。勤怠データが給与計算に自動反映されれば、集計の手間がなくなります。最終的には、KPIダッシュボードで経営数値をリアルタイムに把握できる状態を目指します。DX推進の全体像についてはDX推進の始め方を、コスト構造全体の見直しについてはコスト構造改革の進め方もあわせてご覧ください。小さく始めて、確実に成果を積み上げていくのが中小企業に合った進め方です。請求書電子化で得られた工数削減の効果を数字で社内に共有すれば、他の業務のデジタル化に対する社内の理解も得やすくなります。
まとめ:請求書電子化は今すぐ着手できるDXの第一歩
- 請求書電子化で工数削減・コスト削減・法制度対応の3つを同時に実現できる
- インボイス制度・電子帳簿保存法の要件は対応ツールを使えば自動的にクリアできる
- ツール選定は「制度対応」「会計ソフト連携」「操作のシンプルさ」を重視する
- 取引先への切り替えは段階的に進め、紙希望の取引先には郵送代行で対応する
- Before数値を把握してから始め、1ヶ月後に効果を数字で確認する
- 請求書電子化を起点に、経理業務全体のデジタル化へつなげる
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この記事を書いた人 — kotukotu編集部 kotukotuは「戦略と実行をつなぐ右腕型パートナー」として、中小企業の売上改善・コスト構造改革・DX推進を伴走支援しています。 kotukotuの伴走支援について詳しく見る
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