生成AI活用の実態調査は、自社の取り組みが同規模の会社と比べてどの位置にあるかを測る材料になります。2026年10月1日、エフアンドエム(中小企業総合研究所)が「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」を発表しました。会員企業2,503社が回答した、中小企業の調査としては回答数の多いものです。
この記事では、数字から読み取れることを整理し、中小企業が次に何をすればよいかをまとめます。
生成AI活用の実態調査(中小企業)から見える全体像
生成AI活用の実態調査とは、企業が生成AIを業務のどこで、どの頻度で、どんな成果と課題を持って使っているかを集計した調査です。今回の調査の概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表元 | エフアンドエム(中小企業総合研究所) |
| 発表日 | 2026年10月1日 |
| 対象 | エフアンドエムクラブ会員企業 |
| 有効回答数 | 2,503社 |
| 調査期間 | 2026年7月1日〜7月31日 |
利用している企業は約70%
業務で生成AIを「現在利用している」企業は約70%でした。ただし、ほぼ毎日使う企業は約20%です。最も多いのは「月に数回、必要なときだけ」というスポット利用でした。
数字を見ると、「使っている」企業の多くは日常業務に組み込んでいる段階ではなく、必要なときに開く道具として使っています。
用途はメール・報告書が6割超
用途(複数回答)で最も多かったのは、メール・報告書の作成で6割を超えました。次いで経営判断の参考や壁打ちが5割弱です。文章作成から始め、考えを整理する相談相手にも使い始めている、という流れです。
なお、本調査は同団体の会員企業が対象です。経営に積極的な会社が多く含まれる可能性があり、中小企業全体の利用率とは区別して読む必要があります。別の調査では導入率が1割台という結果もあり、調査ごとに数字が大きく異なります。
毎日使う企業に起きていること
毎日使う企業は、スポット利用の企業と比べて成果の実感が違います。
- 業務の質が上がったと回答:約90%
- 労働時間が減ったと回答:6割台半ば
これは「ほぼ毎日利用」企業に絞った数字です。使う頻度が高いほど効果を感じやすい、という読み方ができます。逆に言えば、月に数回の利用では時間削減の実感が得にくい可能性があります。
たとえば、週1回の会議の議事録作成と、毎日届く問い合わせメールの返信下書きでは、AIを使う回数がまったく違います。頻度の高い定型業務に当てるほうが、効果は積み上がります。
課題は情報漏えいと確認作業、ルール整備は約1割
毎日使う企業が挙げた課題で最も多かったのは、情報漏えいと著作権のリスクでした。次に、出力内容の確認・修正の負担が高い割合で挙がっています。
一方で、社内ルールを整備している企業は全体の約1割にとどまります。利用は約70%なのに、ルールがあるのは約1割です。
つまり、多くの会社で「各自の判断で使っている」状態になっています。この状態で起きやすいのは、顧客名や見積金額をそのまま入力してしまうことや、AIの出力を確認せず社外に送ってしまうことです。
ルール作りは大がかりである必要はありません。最初は次の3点を1枚にまとめれば足ります。
- 入力してはいけない情報(顧客の個人情報、未公開の価格、契約書の原文など)
- 社外に出す文書は、必ず人が読んでから送ること
- 使ってよいツールと、会社として契約するプラン
詳しい作り方は中小企業のAI運用ルール整備ガイドで解説しています。
未導入企業の最大の壁は「どの業務に使えばよいか分からない」
未導入または利用をやめた企業が挙げた最大の理由は、「どの業務に使えばよいかイメージが湧かない」でした。ツールの価格や難しさより前に、用途が決まっていないことが止まる原因になっています。
同じ傾向は、AI活用の理解と実践のギャップを扱った調査でも見られました。理解は進んでいても、業務に落とし込めていない会社が多いということです。
最初の業務を選ぶ3つの条件
用途が浮かばない場合は、次の条件を満たす業務から選びます。
- 週に何度も発生する(頻度が高い)
- 文章や数字の転記が中心で、判断が少ない
- 間違えても社外に出る前に人が直せる
条件に合う例は、メール返信の下書き、日報・週報の作成、請求書の転記などです。AI書類処理の始め方に、具体的な進め方があります。ChatGPTを使った業務全体の整理は、ChatGPT業務活用の全体ガイドも参考にしてください。
自社の現在地を確認する4つのチェック
調査の数字を、自社に当てはめてみます。
| 確認項目 | 調査の傾向 | 自社の状況 |
|---|---|---|
| 利用頻度 | 毎日使う企業は約20% | 週に何回使っているか |
| 用途 | メール・報告書が6割超 | 定型業務に使えているか |
| 確認体制 | 出力の確認・修正が負担 | 確認する担当は決まっているか |
| ルール | 整備済みは約1割 | 1枚のルールがあるか |
この4項目のうち、ルールと確認体制は費用がほとんどかかりません。ツールを増やす前に、ここを固めるほうが安全です。
よくある質問
Q1: 調査の「約70%が利用」は、自社も導入すべき目安になりますか?
A: 目安にはなりますが、結論を急ぐ根拠にはなりません。回答は会員企業の自己申告で、スポット利用も含みます。まず自社の業務で、頻度が高く判断の少ない作業が1つあるかを確認してください。
Q2: 社内ルールがない場合、最初に何をすればよいですか?
A: 「入力してはいけない情報」を決めることです。顧客の個人情報、未公開の価格、契約書の原文を入力しない、と書くだけでも事故の確率は下がります。A4で1枚にまとめ、全員に配ります。
Q3: 毎日使うまでに、どれくらいかかりますか?
A: 会社によって差があります。目安として、1つの定型業務(たとえばメール下書き)を決め、2〜4週間試すと、続けるか見直すかを判断できます。最初から全社に広げず、2〜3人で始めると修正が早く済みます。
まとめ
今回の調査から言えるのは、次の3点です。
- 利用企業は約70%だが、毎日使う企業は約20%にとどまる
- 毎日使う企業ほど、質の向上(約90%)と時間削減(6割台半ば)を実感している
- 社内ルールの整備は約1割で、利用に対策が追いついていない
何から始めるか決まらない場合は、業務の棚卸しと1枚のルール作りから進めるのが現実的です。kotukotuでは、AI活用の対象業務の選定から運用ルールの整備まで、中小企業の実情に合わせて伴走しています。進め方に迷う場合は、無料相談をご利用ください。
出典:エフアンドエム「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」(2026年10月1日発表)
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