事業承継の準備と進め方|経営者が今から始めるべき5つのステップ

経営・戦略 2026年3月18日 kotukotu編集部 約8分で読めます

「事業承継はまだ先の話」と考えていると、いざ必要になったときに選択肢が狭まります。実際、中小企業庁のデータによると、事業承継の準備に5年以上かかるケースは全体の3割を超えるとされています。事業承継は「今すぐ引退する」という話ではなく、「将来のために今から準備を始める」という経営戦略の一つです。

本記事では、事業承継の基本的な考え方から準備の進め方まで、中小企業の経営者が知っておきたい実践ステップを紹介します。

事業承継の3つの形態を理解する

事業承継には大きく分けて3つの形態があります。それぞれの特徴を理解しておくことが、準備の第一歩です。

親族内承継は、子どもや配偶者などの親族に引き継ぐ方法です。社内外の理解を得やすく、株式移転も計画的に行いやすいメリットがあります。一方で、後継者に経営の適性があるかどうかの見極めが重要です。

社内承継は、役員や従業員に引き継ぐ方法です。事業内容を熟知している人材に託せる反面、株式取得のための資金調達が課題になることがあります。

**第三者承継(M&A)**は、外部の企業や個人に事業を譲渡する方法です。後継者がいない場合の有力な選択肢ですが、企業価値の算定や買い手とのマッチングに時間がかかることもあります。M&Aに関心がある場合は、中小企業のM&A入門も参考にしてください。

どの形態を選ぶかによって準備の内容が大きく変わるため、早い段階で方向性を決めておくことが大切です。

事業承継の準備はいつ始めるのが良いか

結論から言うと、「思い立ったときが始めどき」です。ただし、具体的な目安としては、引退を考える5〜10年前には準備を始めることが推奨されています。

なぜそれほど早く始める必要があるのか。事業承継には以下のような時間のかかるプロセスが含まれるためです。

  • 後継者候補の選定と育成(2〜5年)
  • 株式・資産の移転計画の策定と実行(1〜3年)
  • 取引先・金融機関への説明と信頼構築(1〜2年)
  • 経営権の段階的な移行(1〜2年)

これらを並行して進めるとしても、最低3年程度は必要です。事業承継を「退職準備」ではなく「経営課題」として捉え、中期経営計画に組み込んで進めていくことが望ましいです。

現状の経営数字がどうなっているかを把握することが、事業承継の準備の土台になります。数字の見える化についてはKPIダッシュボード構築ガイドを参考にしてみてください。

後継者選定と育成のポイント

事業承継で最も難しいのは後継者の選定と育成です。「誰に引き継ぐか」を決めるときに考慮したいポイントをまとめます。

経営者としての適性を見る。現場の実務ができることと、経営判断ができることは別の能力です。数字を見て意思決定する力、人を巻き込む力、変化に対応する力の3点は最低限必要とされています。

段階的に経験を積ませる。いきなり社長に就任させるのではなく、まずは一部門の責任者として経営的な判断を経験させることが有効です。kotukotuが伴走支援したクライアントの例では、後継者を営業部門の責任者に据え、2年間で売上管理・人材マネジメント・予算策定を一通り経験させたうえで代表交代に進みました。

外部の経営者育成プログラムも活用する。社内だけで後継者を育てると視野が偏りがちです。商工会議所や中小企業大学校が提供する経営者育成講座への参加も一つの方法です。

後継者の育成に時間をかけることは、事業承継の成功率を大きく左右します。焦らず計画的に進めることが重要です。

株式・資産の移転を計画する

事業承継における株式・資産の移転は、税務面で大きな影響を及ぼします。特に中小企業の場合、自社株の評価額が想定以上に高くなることがあり、後継者に過大な税負担が生じるリスクがあります。

株式移転の主な方法としては以下があります。

  • 贈与:生前に株式を段階的に移転する。暦年贈与の非課税枠(年110万円)を活用するケースが多い
  • 売却:後継者が適正価格で買い取る。資金調達の計画が必要
  • 事業承継税制の活用:一定の条件を満たせば、贈与税・相続税の納税が猶予される制度

特に事業承継税制(特例措置)は2027年12月までの時限措置となっており、活用を検討する場合は早めの対応が必要です。税理士や公認会計士に相談し、自社の状況に合った移転計画を立てることをおすすめします。

資金面の課題がある場合は、資金繰り改善の方法も併せて確認しておくと、承継後の経営安定に役立ちます。

経営の引き継ぎで見落としがちなこと

株式や資産の移転は事業承継の「形式的な部分」です。実際に事業を継続していくためには、「経営ノウハウの引き継ぎ」がもっと重要です。

見落としがちなポイントとして、以下があります。

暗黙知の可視化。長年の経営で培った判断基準や取引先との関係性は、文書化されていないことが多いです。主要な取引先ごとの対応方針、値決めの考え方、クレーム対応の基準などを言語化しておくことが大切です。

人間関係の引き継ぎ。金融機関・主要取引先・業界団体とのつながりは、経営者個人に紐づいていることが少なくありません。後継者を早い段階から同席させ、顔と名前を覚えてもらうことが必要です。

組織文化の継承。創業者や現経営者が大切にしてきた価値観を、どう次世代に伝えるか。これは最も難しいテーマの一つですが、経営理念の再定義や行動指針の策定を後継者と一緒に行うことで、自然な形で継承できます。

従業員への説明とケア。事業承継は経営者だけの問題ではありません。従業員にとっても「自分の雇用はどうなるのか」「会社の方針は変わるのか」という不安は大きいものです。承継の方針が固まった段階で、従業員に丁寧に説明する場を設けましょう。説明が遅れると社内に憶測が広がり、優秀な人材が不安から転職してしまうリスクがあります。

経営の引き継ぎを円滑にするためには、属人化した業務を仕組み化しておくことが欠かせません。自走する組織のつくりかたで紹介している考え方が参考になります。

事業承継を支援する外部機関と制度

事業承継を一人で進めるのは大変です。活用できる外部支援を知っておくことで、選択肢が広がります。

事業承継・引継ぎ支援センターは、各都道府県に設置されている公的な相談窓口です。無料で専門家に相談でき、後継者不在の企業のマッチング支援も行っています。

事業承継補助金は、事業承継をきっかけとした新たな取り組みに対して交付される補助金です。承継後の設備投資や販路開拓に活用できます。補助金・助成金の活用全般については中小企業が使える補助金・助成金ガイドでも解説しています。

認定経営革新等支援機関は、国が認定した税理士・中小企業診断士・金融機関などです。事業承継計画の策定から税務対策まで、専門的なアドバイスを受けられます。

実際にkotukotuが伴走したBtoB企業では、経営者が事業承継を視野に入れた段階から経営の見える化に着手し、上位20%の顧客に集中する戦略を実行した結果、3ヶ月で売上が23%増加しました。承継前に収益基盤を強化しておくことで、後継者が引き継ぎやすい状態をつくることができます。こうした売上改善の取り組みは、承継準備と並行して進めることをおすすめします。

まとめ:事業承継は「経営戦略」として取り組む

  • 事業承継には3つの形態(親族内・社内・第三者)があり、それぞれ準備内容が異なる
  • 引退の5〜10年前から準備を始めることで、選択肢を広く保てる
  • 後継者の選定と育成には段階的なアプローチが有効
  • 株式・資産の移転は税務面の計画が不可欠。事業承継税制の期限にも注意
  • 暗黙知の可視化と人間関係の引き継ぎを忘れずに
  • 外部の支援機関や制度を積極的に活用する

事業承継は「引退のための作業」ではなく、会社の将来を左右する重要な経営戦略です。早く始めるほど、選べる道は多くなります。


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この記事を書いた人 — kotukotu編集部 kotukotuは「戦略と実行をつなぐ右腕型パートナー」として、中小企業の売上改善・コスト構造改革・DX推進を伴走支援しています。 kotukotuの伴走支援について詳しく見る


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